当院では、患者さんの体質に合わせて養生指導を行う場合があります。
例えば、
- 運動(散歩)をする
- カフェインを控える
- 食事に偏りがあればバランスよく摂取してもらう
- 睡眠時間が足りなければ睡眠をよくとる
などが養生指導の一例です。
今回はその中の「散歩」についてピックアップして解説します。

数ある運動の中から、なぜ養生指導で「散歩」を勧めるのか、疑問に思う方も多いと思います。
東洋医学には、「心身一如」という考えがあります。
心と体は切り離すことができない一体のものであり、心と体のバランスを保つことで健康を維持することができるという考えです。
心の不調が体の症状に影響し、体の症状が心の不調を招きます。
精神面が伸びやかになると症状が和らぐ場合がありますし、逆に体調が良くなると心の状態も改善します。
(例えば、仕事に集中している時には痛みを感じにくい、仕事が落ち着いてくると痛みを感じやすいなど)
東洋医学では、五臓六腑(肝・心・脾・肺・腎・胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)といって、現代医学における解剖学の知見とは異なる概念が存在します。
単なる物質的臓器として存在するだけでなく、身体の様々な機能をそれぞれの臓腑が司っています。
脾の臓には、このような働きがあります。
- 運化(飲食物を消化して全身に送る)作用
- 消化・吸収
- 昇清(運化で吸収したものを身体の上部へ送る作用)を主る
- 統血(血が脈外に漏れ出ないようにする作用)を主る
- 肌肉(筋肉のこと)を司る
- 津液(水分)の生成を主る
- 四肢・手足を司る
五臓六腑のうち、脾の臓は四肢・手足を司っているため、散歩をして手足をよく動かすと脾の臓が活性化します。
セカセカした早歩きは、精神的に緊張させるため効果的ではありません。心身のリラックスをさせるという目的があるので、ゆったりと歩くことが重要です。
「仕事で体を動かしているから運動をしている」という人もいますが、これは運動は運動ですが、このような体の使い方をすると精神的緊張を伴うため、心身をリラックスさせることはできません。
また、荷物を持ったり背負った状態で散歩をすると、体の上下左右のアンバランスを起こしたり、体を緊張させたままの状態で運動をすることになるため、効率よく心身をリラックスさせることができません。
心身のリラックスは、身体の緩慢な動きと呼吸によって得られます。何も持たずに手ぶらでゆったりと散歩をすることが、心身ともにリラックスできる運動として効果的です。

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