北辰会とは藤本蓮風先生が、膨大な臨床実践から、診断治療法則を誰もが実践できるように「北辰会方式」を提唱し、それを学ぶ場として鍼灸学術団体「北辰会」を設立しました。
北辰会方式は、世界の医学論文を検索する文献情報データベースから閲覧可能であり、世界に向けても発信されています。
Significance of acupuncture treatment for medical staff with low back pain: A case report
北辰会方式の特徴
【弁証論治】
東洋医学の考え方に則り病を分析する事で、病の本質を捉えます。問診では単に結果だけを聞くのではなく、何故その症状・病気になったのか(病因病理)を明らかにします。
弁証論治とは、四診(望診、聞診、問診、切診)から導き出され、病の病態と病理を分析・帰納する過程であり、これが「弁証」です。
- 痛みの性質、増悪因子、緩解因子、不変因子
- 季節、天候、時間による主訴の変化
- 飲食、二便、運動による主訴の変化
- 脈診、舌診、腹診、背候診、経穴診など各種診察法で得られた情報
これらの情報によって導き出された「証」に基づき、治療方針を決定することを「論治」といいます。
例えば、同じ病気でも「証」が違えば、治療法が異なります。
同じ腹痛に対する治療でも、手に鍼をする場合もあれば足に鍼をする場合もあります。これを「同病異治」といいます。
一方、全く違う病気でも「証」が同じであれば、同じ治療法を施すこともあります。
腹痛と頭痛で症状は異なるが、どちらも頭に鍼をする場合もあります。これは「異病同治」といいます。
弁証論治は中医学の最大の特徴であり、中医学臨床の精髄です。当院では、中医学の考え方をベースに、詳細な問診と日本で独自に発展した体表観察を取り入れて治療を行っています。
弁証法には、八綱弁証・臓腑経絡弁証・気血津液弁証・病邪弁証・六経弁証・衛気営血弁証・三焦弁証・正邪弁証・空間弁証などの多くの方法があります。
各弁証法を用いることによって、東洋医学的体質や病の性質などを捉えます。それらの弁証方法をマスターするのは、東洋医学に従事している者には必須な課程となります。
【多面的病態把握】
問診、脈診、舌診、腹診、背候診などから多面的に情報収集をします。
身体を診ずに問診内容だけで判断をしたり、脈診・舌診の情報だけで身体の状態を判断するのではなく、あらゆる情報から病気の原因と身体の状態を東洋医学的に明らかにします。
多面的に病態を把握した上で、最も効果的な経穴(ツボ)に治療をします。
この図は病因病理チャート図といい、アトピー性皮膚炎が主訴の一例になります。問診や各種診察法を行ったのち、多面的に病態を把握して纏めた情報になります。

一般の方が理解するのは専門用語が多く難しいですが、文字よりも図で示すと東洋医学の理論に基づいて治療をしているのだと認識していただきやすいと思います。
普段の診療の中で、問診と診察をしながら様々な情報を纏めて、この病因病理チャート図を頭の中で描きながら、最も効果的な治療法を選択しています。
【体表観察】
体に触れて生体から発する情報を捉え、五臓六腑や経絡の状態を確認します。
体表観察には、望診、腹診、背候診、原穴診、井穴診、尺膚診、空間診などがあります。
体表観察とは、生体の状態を直接触れて診ることを中心とし、体表から得られた状態から体内の状況を察知するための診察法です。
気色・色・形態等を視覚によって観察する望診や、直接体表に触れず手を翳して気の状態を窺う衛気診も体表観察に含まれます。
以下の①~⑥は体に触れないで診察する「望診」、⑦~⑬が体に触れるまたは手を翳す「切診」といいます。
①顔面気色診・・・顔面部で各臓腑の状態などを診る
②舌診・・・体の寒熱、各臓腑の状態などを診る
③眼診・・・血の状態や精神状態などを診る
④爪甲診・・・各臓腑や各経絡、気血とくに血の状態を診る
⑤皮膚診・・・各経絡や経穴の状態などを診る
⑥毛髪診・・・精、血の状態を診る



⑦背候診・・・背部の各経絡や経穴、各臓腑の状態を診る
⑧腹診・・・腹部の各経絡や経穴、各臓腑の状態、体の上下左右の気のバランスを診る
⑨原穴診・・・手足を中心に各経絡や経穴、各臓腑の状態を診る
⑩井穴診・・・指先の経穴から各経絡や経穴、各臓腑の状態を診る
⑪脈診・・・橈骨動脈に触れて、脈管の太さ・脈幅・脈力・脈拍と脈の形状・脈の緊張性・脈の浮沈などから、各経絡や経穴、各臓腑の状態、体の上下左右の気のバランスを診る
⑫尺膚診・・・手~肘までの皮膚に触れて、各経絡や経穴、空間的気の偏在を診る
⑬衛気診・・・体表に手を翳して気に触れて、虚実・寒熱を診る


